2014年御翼5月号その3

「出て来なさい」が三浦文学のテーマ

 三浦綾子の小説『氷点』の主人公・陽子という名は、綾子さんの実の妹の名である。妹・陽子は綾子さんが13歳のときに病死している(享年6歳)。綾子さんは近所の暗がりに行って、「幽霊でもいいから会いたい。陽子ちゃん、 幽霊でもいいから、出ておいでよ」と言うほど、妹の死を悲しんだという。そして、この「出ておいでよ」が三浦文学のテーマでもあると、三浦綾子記念文学館特別研究員の森下辰衛氏は言う。森下先生は、綾子さんが担任だったという教え子に会ったことがある。この男性は当時、登校拒否になると、綾子先生は大福餅を自宅まで持ってきてくれて、「坊ちゃん、学校に出ておいで〜」と優しく声をかけてくれたという。そして文学作品の中にも、恐れずに出ていらっしゃい、と登場人物に言わせる場面(『銃口』)がある。イエス様が、悲しみの涙を流した後に、墓に葬られたラザロに向かって「出てきなさい」と言われるとラザロは死から蘇った。この場面を読んだとき、「出てきなさい」と言ってきた綾子さんは、イエス様が大好きになったのではないか、と森下先生は言う。
 この世的な恐れに縛られ、自由に賜物を発揮できない人たちに、イエス様は、その殻から出てきなさいと言われる。そして、十字架のあがないによって私たちに神の子としての復活の力を与えてくださるのだ。人々は神の子としての自尊心を回復し、賜物が用いられ、人を助けられるようになる。
 榮 義之『輝き・可能性への変身』(グッドワーク研究所)の中に、人が神から与えられた素晴らしさを見出し、発揮するために、「鏡を使う技術」が記されている。  
 医者が、この患者の病気は必ず治ると期待すると、回復が早くなる、心理学者の話では、こうしたことは現実に起こることだということです。私たちが自信を持ち、熱意を持って生きるためには、自分自身に対する期待を持たなければなりません。
 ここでちょっとした秘訣をお教えします。それは鏡を使う技術です。鏡は、朝ひげを剃り、化粧をする道具だけにしておくのはもったいない秘密兵器です。鏡を使う時、そこに映っている自分に向かって期待のことばをかけるのです。「おまえはすばらしい男だ。ハンサムで上品な紳士だ。今日もおまえに期待している人がたくさんいるのだ。さあ勇気を出して、熱意に燃えた心と態度で出かけよう」。何でもいいんです。自分に期待のことばをかけることです。あなたが女性なら「私は美しい。ほほえみと笑顔は私のモットーです。やさしいことばはわたしの信条です。今日も私は素敵に輝いています」と、期待のことばをいっぱい語りかけて下さい。
 また、鏡を使う時、自分の目をしっかり見る習慣をつけることです、目は心の窓で、あなたが心で考えていることを外に現します。あなたの値打を決める正札(しょうふだ)は目なのです。(マタイ6・22〜23「(22)体のともし火は目である。目が澄んでいれば、あなたの全身が明るいが、(23)濁っていれば、全身が暗い。だから、あなたの中にある光が消えれば、その暗さはどれほどであろう。」)この鏡の技術で、あなたの目をチャーミングにし、生き生きとした目にして下さい。鏡を用いると、あなたの目は何ものをも貫いて、すべてのものを奥まで見通すような深い目になります。相手の人は、自分の魂の底まで見透かされるのではないか、というような気持になるものです。
 そうして、いつの間にかあなたの目には強い迫力がこもり、「期待しているよ」と言う一言も、より自信に満ちたものとなります。さあ、今日から鏡をもっと活用して下さい。
 あなた自身に期待しましょう。そうすれば、あなたはいきいきと生きることができます。どんな偏見にも打ち勝つことができます。あなたが人の気持を明るくさせ、親切で熱心で、楽天的な人でしたら、きっと多くの人の心を喜びで満たし、偉大な人生を生きることができます。期待して、自分の心を毎日広い愛で満たして下さい。あなた自身に期待しましょう。そうすれば人を許すことが易しくなるでしょう。許すことは人生を豊かにします。自分に期待する人は、他の人にも寛大です。仏の顔も二度、三度というような有限の許しではなく、七度を七十倍するほどの無限の許しを体験して下さい。あなたが誰かを無条件で愛するなら、同じように愛してもらえるでしょう。

バックナンバーはこちら HOME